「そんな話の前編」

2013/04/08

最近はとりとめて書くような事も無いので、あったことをそのまま、うだうだと書きます。
時間が惜しい方は是非とも読まないでください。
仕事で地方に行くことがある。
物心ついた時から都会にいると、地方で体験する事のほとんどが未体験で、どこに行っても新鮮だ。
それで昔はよく一人で旅に行っていたけれど(昔といっても一回り年が若い時)、
同じ場所に行くにしても、仕事で行くのと観光で行くのとでは過ごし方が全然違って面白い。
先日の出張での事。
早朝大阪駅を出て昼前に目的の駅に着くと、特急電車が止まる駅とは思えない程のまばらな降車の人の数、そして駅員がハンコを握る改札に驚いた。
車の出迎えは社長直々にやって来る。
社長とは数回しかお会いしていないけれど、既に馴染んでしまっている。
駅を出ると既に来ていたので挨拶も程々にして後部座席に乗り込み、観光で来ても絶対通らないような裏道を通り目的の会社に向かった。
車はフォルクスワーゲンのセダン。
車名は分からない。
高価なのかもしれないけれど、塗装面は若干光沢が薄れているように見える。
冬は道路に塩分が含まれる凍結防止剤が撒かれる為、車がすぐに傷むという。
どうやら冬用と夏用の車があるらしい。
まず最初に案内された、本社とは離れた場所にある工場に着くと、駐車場にはハコ型の軽自動車と原付のスクーターが並んでいた。
通された部屋には仕出し弁当が積まれていて、いい匂いでお腹もすいてきたけれど、日産表が書かれた黒板を横目に製造工程の説明が始まった。
それから現場に入り、全ての工程を実際に見ながら説明してもらった。
工場の製造現場というのは、日本でも中国でもそんなに変わらない。
見ただけで決定的に違うのは、設備も働く人も日本の工場の方がぐんと平均年齢が高いくらいか。
初めて行く工場の現場に入ると、十中八九、工員さんにどこの馬の骨だみたいな顔をされる。
しかもチラ見だ。
それは工場内は皆黙々と目の前の一つの工程に集中していて緊張感が漂い、ちょっと気を緩めると大怪我にも繋がるからだ。
それでもその時は何か大きな受注があったらしく、ショールームに所狭しと並べられた製品を工員総出で梱包にあたっていた。
それからまた車に乗り、本社に向かった。
工場街から今度は市街地の方へ行くようだった。
会議室に通されると何故か机の隅に昨日の残り物らしい未開封のビールが置いてある。
僕が面白半分にその事を指摘すると、真剣に捉えられたようで一瞬ばつの悪い空気が流れた。
気を取り直しておもむろに持参のPCの電源を入れるが、Wifiは飛んでいない。
ホワイトボードには前日の会議の内容が消されずに残っている。
会議室はもちろん喫煙可だ。
普通の会議やミーティングというのは、決められていようが暗黙の了解だろうが1時間や2時間で終わるものだけれど、遠方からの来客も多いからかミーティングは延々と行われる。
事前に議題が定められているわけでもない。
依頼されている課題がボヤっとしたところからスタートしているので仕方ない。
それでこそやり甲斐があるというもの。
頻繁に行き来できない場所にある会社に行くと、その日のうちにどうやって作るかまで話を進める。
次回持ち越しなどほとんど無い。


これは海外の工場に行っても同じ事で、持ち帰って検討しますでは話にならない。
滞在している限られた時間の中で答えを出していかないと、持ち帰られては相手にとっても機会が遅れるだけ。
だから海外のデザイナーは何週間も工場に滞在してインターネットで本国と連携するのだ。


日産数は何個位か、持て余している工程を使えないか、原価はどれくらいになるか、販売価格はどれくらいか、どのお客にどうやって売るか。
設備の維持や自社工場の職員、外注工場の職員の生活まで背負っているわけだからそこはシビアだ。
製造工程を見たり、工場の人達と言葉を交わしたりしていると責任感もひとしお。
そんなミーティングが一通り終わると、時間はもう夕方の5時か6時でクタクタになる。
疲れるというのはスポーツなんかで体を使ったときじゃなくて、頭を使った時なのだなと心底思う。
一旦事前に予約したビジネスホテルに戻り、社長と一緒に夕飯を食べる為、夜にまたお迎えが来ることになっている。
予約したホテルはいたって普通のビジネスホテル。
センスの欠片も無いけれど、欠点だって特に無い。
駅前だというのにホテルの相場は3000円~4000円で朝夕のご飯付き。
普通じゃない所といえば、ビジネスホテルとはいえ宿泊客の多くは作業服を着ているくらいか。
ちなみにこのホテルの目玉は、何と言っても夕ご飯のカレーライスお替わり無料。
その代わりと言っては何だけど、インターネットは有料だ。
自室でWimaxに繋げて徒然とインターネットやメールの返信をしながら時間を潰していると、あっという間にお迎えの時間がやって来た。
そうして僕はカレーの香りが漂うロビーを尻目に、社長と共に何とも詫び寂びのきいた夜の街へと繰り出すのであった。
後編に続く。
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