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2013/11/11

「感想文」

先日、映画「世界一美しい本を作る男」を見ました。
映画を見に行くときはいつも何も調べずタイトルだけで選ぶ事も多いので、何となく本の装丁作家か絵本作家の話かと思って映画館に行きました。
ドイツの出版社シュタイデル社の話だという事も映画が始まってから分かったくらいです。
シュタイデル社はドイツの小規模な出版社。
小規模とはいえ世界的に有名な写真家の写真集や芸術家の作品集などを出版しています。
この映画はその経営者、ゲルハルト・シュタイデル氏に密着したドキュメンタリー映画でした。
以下は完全に感想文です。
見る予定の人は読まないでください。
使われていたフィルムが、あえてドキュメンタリーっぽいものでも無く、映画のような高精細なフィルムでも無く、よく見るNHKっぽいTVのドキュメンタリーの雰囲気だったので、これは寝てしまうかな?と思ったのですが、監督の策にはまってしまい、最後まで見入ってしまいました。
というのも、会社の規模を大きくする気は無い、商品では無く作品を作っている、冒頭でシュタイデル氏がこう言っていました。
そしてそのシュタイデル氏の声は小さく、どもり気味。
こつこつ作品のような本を作り続けているをしている人の話かな、と思ってしまいました。
ところが時間が進むにつれて、そうでもない一面がどんどん出てきたのです。
シュタイデル氏自身が本が好き過ぎるという事は当然の事。
ドイツの小さな出版社だけど、世界中にクライアントを持っていて、氏は打ち合わせの為に飛び回っています。
打合せの時はアーティストに対し本の構成やデザイン、紙やインク、印刷方法、価格についてアドバイスをしたり、また、悩むアーティストに対しスムーズに仕事が進むように本作りを促します。
会社に戻ると印刷の具合をチェックしたり、社内のデザイナーと構成について試行錯誤をくりかえし、アーティストとともに印刷直前まで色の具合を調整します。
印刷も一般的な出版社とは違い社内で行います。
一度に印刷する部数も数百部から数千部だそうですが、中には数十万円も本もある。
映画が終わる頃には最初の職人的イメージとは全然違っていました。
これがギャップ萌えというやつかもしれません。
監督の策略じゃないかと思います。
彼は優れた職人でもありながら、優れた経営者でもあり(たぶん)、研究者であり営業マンでありデザイナーなのでした。
だからこそ世界中にシュタイデル社から出版される本の愛好家がいて、世界中のアーティストたちがシュタイデル社からの出版を望み、入社を志願するデザイナーや職人がいるのでしょう。
会社が大きくなると、自分の会社が経営する飲食店の材料が分からなくなります。
しかも分からない事情にも共感できてしまうの今の経済活動の有様です。
どんな映画にも少なからず監督のメッセージが込められていると思いますが、この映画では常に最前線で戦うシュタイデル氏の姿を映し、これからの会社のありかたの一つを示唆しているように思いました。
また小規模と言いながら撮影期間中の一年間くらいの間に300冊近くを出版したというから驚きです。
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