「建築物の一部として初めからそこにあったような時計」
高岡の鋳物工場を見学させて頂いた時、そこで製造されているものは高岡の伝統産業として有名な仏具だけではなく、
配管の蓋などの建材や車輌の部品といった、普通に生活していればあまり意識されないものも多く、高温の炉でドロドロに溶けた金属が型の中で冷えて成型されたそれらは、控えめな形だけれども内側に秘められた強いエネルギーを持っていた。
それらを見た時から鋳物を使って時計を作りたいと思っていた。
人知れず生活の一部をずっと支えてくれている部品たち。
いつからあるのか分からないけれどずっと前からあるような気のするもの。
そんなことを思いながらデザインを考えていたら、自分は特に何も手を加えることが無い事に気が付いた。
その素材の魅力を活かすため、余計な手を加えず数字だけがレイアウトされた存在感は、
建築物の一部として初めからそこに在ったかのような気にさせてくれる。
文字盤の数字は、鋳物に不可欠な抜け勾配と文字盤形状とのバランスを考慮してデザインしたオリジナルフォント。