間伐材から生まれた歯ブラシ
1960年の創業以来、歯ブラシの製造・開発を通じて「歯と環境の健康」を追求してきた大阪府堺市の旭産業株式会社のためのデザイン。ホテルや航空会社のアメニティをはじめとする消耗品分野では、脱プラスチック・低炭素への移行が急務となっており、同社も環境配慮型製品への転換を進めてきた。アメニティに限らず備品やインテリアにおいても自然素材への期待が高まる一方で、衛生面や耐久性、使い心地との両立は長年の課題であった。
本プロジェクトでは環境素材の採用に伴う機能・衛生・運用・ブランドの課題を、製品設計と事業設計の両面から統合的に解決することを目指した。
Zero Plastic Handle™ は、木材由来の次世代成形素材「CXP」を採用し、これらの課題を製品として成立させることを目指した。

自然素材に付いて回る吸水性や表面の粗さは、衛生管理が重視されるホテルの運用において懸念材料となる。本作では、素材の質感を損なわない高度な造形設計により、滑らかな表面と低吸水性を実現。自然素材の風合いを維持しながら、カビの発生を抑え、現場での扱いやすさを確保。
造形においては、しっかりと握るスタイルと、繊細な「ペン持ち」の双方に適応する形状を模索。導き出された扁平な六角断面は操作性を高め、環境配慮と引き換えに使い心地を犠牲にしないデザインとなっている。

CXP素材は歯ブラシの素材として国内で初めて使用される素材のため参考とする事例が無く、強度の推定検証や材料コスト算出の為、数十本に及ぶプロトタイピングと3Dデータの検証を経て本形状にたどり着いた。
形状決定後は簡易金型を制作し、成形・流動検証を慎重に行った上で製品化に向けた着実な開発の伴走を行った。
間伐材や林業副産物を原料とした素材は木の柔らかな風合いとほのかな香りを持ち、ホテルの空間に静かに馴染む。過度に主張することなく、手に取ったときの質感や佇まいが体験を支える存在となることを心掛けた。

フィジカル面の課題以外に、高価格帯の宿泊施設では宿泊施設のブランド名を冠したパッケージに入る事が多く、メーカーの観点からはOEMとも言える性質があり、優れた環境素材でありながら一般に認知されていない本素材をどのようにすれば宿泊客の目に留まるかというホテルアメニティ特有の課題を克服する必要があった。その一環として、宿泊施設のブランドにも配慮し、「Zero Plastic Handle™」という一般名称を連想させる商品名を考案し、本体に刻印することとした。

また、近年増加してきた小規模でありながら質の高い宿泊体験を提供する宿泊施設の為に少ロットでも流通できるよう、同社として初めての試みである、ホテルブランドではない自社ブランドの起ち上げを行い、素材の置き換えにとどまらず、製品・運用・ブランドを横断して成立させることを重視した設計である。

設計領域
・プロダクトデザイン
・プロトタイピング
・CMFデザイン
・ネーミング
・ロゴタイプデザイン
・グラフィックデザイン
・パッケージデザイン
・商品開発ディレクション
・アートディレクション
・ブランディング
・プロモーション支援
・展示会構成、ディレクション

